1993年8月の日曜日、福井県敦賀市の気比の松原の海で事故は起こりました。
水上スキーをしていて転倒、気の緩みがあったのか約60km/Hの速度そのままで左顔面を海面で強打して、気が付いたら海中でした。海面に出ようとしたところ、二の腕から先が両方ともしびれて痛いような、力の入らない麻痺状体になっていました。ライフジャケットの浮力で海面には出ましたが、ボートに上がることも出来ない状態でした。
時間がたつとともに痛みは、さらにひどくなり手の甲に焼け火箸を入れられたような激痛に変わり、頭の中が白くなっていくような感じがしました。指先にはビリビリと電気が走り少し腫れたようでした。日曜日でしたので救急病院の方へ行ったのですが、血が下がるとさらに痛いので手を胸のほうへ上げたままという状態でした。その状態が、加藤先生の所に一週間後に行くまで続くとは思いもよりませんでした。
診断は、レントゲンを診る限りでは異常はない、しばらく神経を活性化させる薬を飲んでいればよいと言われました。ちなみに計測した握力は左15kg、右17kgと信じがたい数値で、測り直しをしましたがもう最初に測った結果には届きませんでした。
薬を飲んでいましたが3日たっても全く回復せず起きている時も寝ている時も手を上に上げたまま、ビリビリした痛みに水に手をつける事も出来ず、着替え、食事、お手洗い、何を取っても一つとして満足に出来るものはありませんでした、もちろん会社は病気休職です。
5日目、病院で脊椎に造影剤を入れて検査をしたいから家族の念書を持ってくるように言われました。念書がいるような検査ですから整形外科の看護師をしている友人の妹さんに問い合わせをしました、返答は検査を受けたところで治るわけでもないし、結果が悪ければ手術となるが一種の賭けみたいな手術だから100%治るとは言い切れない、出来る事なら危険な検査だから最後の手段にしたほうが良いと言う内容でした。所で、この事故までに私は、数回、腰痛などで加藤先生の治療を受けていました。
これをお読みの皆さんは、私が敦賀市から遠い加藤治療院の事をなぜ知っていたのか不思議に思われるかもしれません。実は私の妹と夫婦が加藤治療院の近くに住んでいて、二人とも先生のお世話になっていたからです。私の住んでいる敦賀でも近所、近在に加藤先生のような治療院は結構あります。しかし治療内容は、はっきり言って、恐る恐るというか、差し障りの無いというか、体を安心して預けられる治療院は皆無に等しい状態です。
というわけで10年程前までは京都の整体師さんの所へお世話になっていたのですがその方も亡くなられ加藤先生を知る数年前までは残念ながら満足のいく治療を受けた覚えがありません。加藤先生は、患者さんからいろんな話を聞き出し、質問し、原因をとらえ、的確な治療を又、アドバイスをなさいます。
そして何よりも治してあげようとする情熱が患者にも伝わって来るようなところがあります。
話は元に戻りますが、加藤先生からも体内に人工物を入れるのは良くないと聞いたことがありましたので、脊椎に造影剤を入れる検査は断りました。
その時点で、やはりこれは加藤先生に相談すべきだったと思い電話で症状を伝えましたところ、直接診ないと分からないが、ともかく何か始めなくてはならないのだからと、お盆休み中の、それも日曜日に診てくださることになりました。当日、血が下がると痛みが増すので腕を胸のほうに上げた状態で、母に付き添ってもらい異様な格好で列車に乗りましたが、この一週間しびれ、痛みとともに、もう2度と元に戻らないのではという不安が四六時中つきまとい、38歳になるこんにちまでけがの巧妙できましたが、今度だけは駄目かもしれないという気持と、加藤先生に期待する気持が複雑にいり乱れていました。
先生の診断は、頸椎捻挫だが単純なものではなく、螺旋を描くように捻じれていると言われました。 治りますかという問いかけに、今すぐ中指を除いた8本の指は動くようになります。唯、中指2本と手の甲の痛みは長い時間と根気のいる難しい治療だが、絶対治るという自信を持って、私を信じて体を任せてくれるなら、私もこんなに難しい治療はあまりしたことはないが、全力を尽くして治療をしますと言われました。その言葉には今までの経験と常に新しい治療法を考え出しているチャレンジ精神が感じられ、この先生に任せてみようと思わせるものがありました。
その後、2時間ほどかけて治療をしたわけですが、先生はその間。常に声をかけてくださり、頸椎を元に戻す位置を探すため、指を動かしてみるようにと一生懸命診て下さりました。中指を除いた8本の指は見事にその場で復活していました。まだ手の甲の痛みは残っていましたし、動くようになった8本の指にもまだ触ると違和感がありましたが、指に力が戻ってきたのは実感し、感激しました。その日の帰り、町田で母と買い物をする精神的余裕も出来て、そして何よりも両手に荷物を持って帰れたのにはびっくりしました。
帰りの列車の中で改めて加藤先生に任せてみようと決断し、希望が持てるようになりました。その後、その年の12月まで17回程、先生の所へ通いました。頸椎が捻じれているため、こちらを治すとあちらがずれるという困難を極める治療だったようですが、先生は行くたびごとに次々と新しい方法を考えて下さり、又、良好な結果が得られました。
病院には休職の診断書を書いてもらわなくてはなりませんので、時々いっていたのですが、医者がびっくりするほどの回復を握力計を握るたびに示し、薬をのんでいるだけでこれほどまでに回復するものかと怪訝な顔でした。ちなみに医者には加藤先生の所へ治療に行っているのは、告げてありませんでした。
その年の12月には、ほとんど100%と言っていい程回復していましたし、握力も元に戻っていました。スキーシーズンに入っていましたのでスキーにも行きました。何の支障もなくスキーができ、元に戻った体に加藤先生の努力の賜物だと感謝感激しました。今年の夏にはこりずに又、水上スキーを楽しんだのですが怪我する前と全然変わる事なく全快したのを心底実感しました。
私の友人で背骨がS字に曲がり、直立すると体が傾いてしまい、足腰が痛いと2カ月整形外科に入院していたのですが、病院では全く良くならず加藤治療院を紹介しましたところ、ものの見事に1カ月で全快し今では、豆腐屋の家業に励んでいる人もいます。加藤先生の困難な治療に向かう姿は本当に驚嘆すべきものがあり、常に新しい治療方法を模索する姿勢には尊敬に値するものがあります。
又、患者さんの立場になっていろいろと問いかけをして下さいますので、本人が気づいていないことまでわかってしまうことがあります。それだけやはり今までの経験と治療に対する情熱が先生の技術力の裏付けになっているのだと思います。
この紙面を借りまして、遠いところの加藤先生を知り得たことに感謝しお礼申し上げます。一生、障害を持ったままになるのかと思っていましたから私にとって加藤先生は命の恩人と表現しても過言ではありません。ありがとうございました。